告白

「時代モノ(ってこの小説がそのカテゴリーに入るのかわからないけれど少なくとも現代の話ではないのだからそういう括りでも間違いではなさそう)」はセリフ?が読みにくいから敬遠してた。でも、いつも見ているブログを書いてる人たちが3人も同じ本を読んで面白いと言ってるんだから挫折してもいいやと読んでみたらやっぱり面白くないわけがなくて恙無く読み終えた。

告白

告白

なんていうかとんでもないシロモノを読んだ気分になった。臓物をまじまじと見たような、胎児を覗き見したような、どういうんだろう、やっぱり内臓的なものを見たのだとおもう。自分のはらわた掻っ捌いて息苦しいんだけど好奇心が止まらずにどんどん切り開いちゃうような。常道を逸した対岸の火事的な(実際赤の他人の話で事実と虚構が入り混じってるんだろうけど)ヒトゴトの物語が面白おかしく進んでゆくのだけど、熊太郎っていう目の細かい篩いがいちいち感情を引っ掛かけてくる。篩いの上の感情は内臓みたいに普段は仕舞ってあるはずのものなのに篩いの目が恐ろしく細かいものだから通り抜けなくて露になってしまう。そういう自覚を繰り返していくうちに熊太郎と自分の境界線がだんだん曖昧になってきて篩いを通過したはずの感情までシンクロしてきて、もうなんだか神経過敏症というかほんとうに腹が立ったりにやにやしたり「ちょう向こう行て休もか」とか言いたくて言いたくて仕方ない。
感化されやすい性質なだけかもしれないけれども、むしろ感化されて熊太郎に同化して熊太郎の中にボクを見た的なものがあってよかったとおもう。そうでなければこんなに愉しめなかったし読了後の身体に風穴が開いたような喪失感を伴う爽やかさというか全財産を突っ込んで負けたときの恍惚感みたいなのは味わえなかったとおもう。なんていうかこの物語は終わったのだ。だから読み返すこともないとおもう(図書館で借りてきたし)。くほほ。

ついでに

読了した人と「もしも映画化されたなら誰がどの役をしたらしっくりくるか」って話をしてたんだけど木下軍曹は本多博太郎さんって意見が一致。そこだけ。あとはバラバラだった。