砂上の楼閣

ヨシダマヤ!ヨシダマヤ!ってフルネームで実況してるからてっきり日本代表にはベンチにもう一人のヨシダくんがいるもんだと思ってたけどヨシダくんは吉田麻也だけだった!なのになぜ彼だけがフルネームで呼ばれるのかしら、と、不審に思いながら背中に女郎蜘蛛の刺青を入れた女が全裸でキッチンに立ちおでんを煮込みながら鍋の中から額烏帽子のような三角の形をしたはんぺんを二つ菜箸で摘まんで取り出して、おもむろに左右の両乳房にペタリと貼りつけて「うふふ・・・食べられるヌーブラ・・・うふっ・・・あついっ!」と涙を流しひとりごちるのであった。その様子を天井裏から覗いていた者があった。彼は薄暗がりの中でコンビニのレシートの裏にさらさらと何事かを書き留めると懐に忍ばせておいた真っ白な手品用の鳩の足首の筒にレシートを丸めて入れたものの鳩を飛び立たせるための外部に繋がる開口部が天井裏にはないことに気づき自暴自棄になって奥歯に仕込んでおいた毒のカプセルを噛み砕き絶命した。一方の女といえば火傷した乳房の手当てをするべく全裸のままベランダに飛び出て鉢植えのアロエの葉というかギザギザしたところをもいで皮を開きゼリー状の果肉を左右の両乳首に塗りたくっていたのだが敏感なところがヌルヌルした感触に包まれると人目も憚らず快楽に溺れ始め、そのまま最もセンシティブな部位に刺激を与えようといつもの如く指先を湿らそうと舌を出して自身の指を舐めてしまったが最後アロエの皮の苦みが口の中いっぱいに広がってもんどりうってエアコンの室外機にしこたま後頭部を打ちつけて帰らぬ人となってしまった。天井裏で主を失った真っ白な鳩は「クルッポー」と意味深な一言を残して開け放たれたベランダの出入り口から西の空へ飛び立った。鳩が10日ほどしてアルジェリアの首都アルジェにある土を塗って作られた丘のような鳩の城に辿りつくと飼育係りの少年数人が駆け寄ってきて足元の筒の中身を確かめ「あっ!お便りがあるじぇ!」「おれの鳩にはないじぇ・・・」と口々に叫ぶと鳩大臣が優雅な素振りを演出しながらしゃなりしゃなりとやってきて「お便りがない者はナイジェリア!」と一喝した。一人の少年が大臣の前に進み出て丸まったレシートのようなものを差し出した。大臣は満足そうにレシートを受け取り袖口に手を突っ込んで捕れたての鰯を掴むとピチピチと跳ねる銀色に輝くそれを大きく開けられた少年の口へ放り込んで丸まったレシートを広げて内容を確認した。そこにはこう書かれてあった。MacBook Air 11インチ欲しい!