そのとき猛烈な便意が
朝、目が覚めたら雪が降ってた。寒いなあと思って再び布団に潜りかけたところで時計を見たら約束の時間まであと30分しかなかったので勢いよく布団を跳ね飛ばして起きた。歯を磨いて寝グセを直して着替える。ヒートテックの猿股を履くときにいつも靴下はインするべきか猿股の上から被せたほうがいいのか悩むのだけど今日は先に靴下を履いていたので猿股インした。約束の時間が差し迫っているのは百も承知だったけれど着替え終わってからココアを飲んで煙草を吸った。煙草はソワソワと焦燥する気持ちを落ち着けるのに役立つのだけどその煙草を吸うために時間を消費することで余計に気持ちが逸って意味がない。そういう話が割りと好きだ。
会社に着いて大急ぎでコピーを何枚かとって車に乗り込み約束の場所へ走らせた。相変わらず雪が降っていてすごく寒い。待ち合わせ場所には時間キッカリに着いたものだと思っていたのだけど2分ほど遅刻してた。手巻き時計はアテにならない。挨拶もそこそこに寒い寒いと言いながら打ち合わせをしたり階段を上ったり下りたりした。懸案事項をそのまま話したら、うーんと唸り声を出して難しい顔をしたまま数秒硬直したのちに「ちょっと考えます(ここじゃ寒くて考えられないし)」と言われたので、じゃあまた来週といって打ち合わせは30分ぐらいで終了した。
寒いからか思ったより早く打ち合わせが済んだので買い物に行った。雪はまだ降ってた。変なイメージソングが店内に流れてて頭がおかしくなりそうだったけれどがんばって全部の棚を見て回った。目当てのものは売ってなかった。お昼のお弁当をコンビニかどこかで買って会社に戻ろうとしてたんだけど寒くて車から降りるのが億劫だったのでなにも買わずに会社に戻ってしまった。そのうち昼休みになり昼飯を調達しないといけないんだけど外に出たら寒そうだったから買い置きしておいたチョコレートが塗ってあるビスケットを1袋食べた。午後の約束の時間が迫ってきてたのは知ってたのだけどギリギリまでストーブの前で暖まってから会社を出た。
同行者の会社に着いたら暖房のきいた会議室に通され少し話をしてから打ち合わせ相手のところに行った。打ち合わせ先には駐車スペースがないので途中で車を止めて数分歩いた。雪の粒が大きくなって湿った感じに変わってきた。肩やフードについた雪を掃って建物に入ると中もそこそこ寒かった。小さい電気ストーブを囲んで立ち話のような格好になりながら話をした。いい話と苦笑いするしかない話を聞いたけれど概ね好感触でいい仕事になりそうだった。打ち合わせが済んだら同行者の会社へ戻り珈琲を淹れてもらって作戦会議をした。来週からの動きを確認してそこを後にした。帰り道ドーナツが無性に食いたくなったのだけどパン屋に寄った。
街には個人商店とかチェーン店とかいろんなお店があるけれど、個人経営のパン屋があるとグッと街らしくなるというか人が暮らす場所になるなと漠然と思いながら売れ残ったパンをいくつか買った。雪はもっと大粒になって積りそうな気配だった。桜並木の枝に雪が乗っていてとても綺麗だった。そして雪が降っていると人が外に出てないからか雪が吸収するのかとにかく街が静かだ。雪は雨のように屋根や道路を叩く音を出さないし。インスタントコーヒーをきらしていたのでティーパックの紅茶を淹れて買ってきたタンドリーチキンの挟まったベーグルなんかを食べた。小さい音でジャズを鳴らして聴きながら、静かな時間を過ごす部屋のことを考えている。