暮情

ちゃっちゃと掃除をして仕事納めにしようと思ってたのに朝から呼び出されて外へ行き、帰り道で穏やかでない連絡が入り納めるどころかうじゃうじゃと残務処理が飛び出してきやがったので結局昨日は暮れの挨拶回りに行けず終いでよくわからないような計算式と格闘してた。それでも間に合わず今日も午後までちっとも納まらない仕事に追われて、延長後半ロスタイムに突入するあたりでようやく挨拶回りに行くことができた。
回るルートにロスがないように順調にお歳暮の箱を捌きながら腹減ったなあ4時ぐらいにはなんか食べれるかなあなんて思いながら数件済ませたところでお世話になっている会社に着いた。会社の事務所がある4階建てのビルの一番上の階に社長さんが住んでいるのだけどちょうど郵便物を取りに来てたみたいで駐車場のところで顔を合わせることができた。気後れしないように多少声を張って、ご無沙汰してますうんたらかんたらと挨拶をしてお歳暮の箱を渡したとき、やあやあそんなに気を遣わなくたってとかなんとか言いながらなんだか嬉しそうに笑ってた。そんなに高価な贈り物ではないからそんな嬉しそうにされたら後でがっかりするんじゃないかとか思いつつ、また来年もよろしくお願いしますと頭を下げてその場を後にした。
それからまた数件回って今度は先日仕事が終わったばかりの先生のところへ行った。いやほんとお世話になりましたと言ってお歳暮を渡すと先生も、どもどもありがとうねと嬉しそうだった。それから少し話をしたりなんかしたんだけど終始にこにこと笑顔のままだった。助手席に積んであった箱もすっかりなくなって遅い昼飯のドーナツを買って会社に戻る帰り道で、今年からお付き合いの始まったような人はさておき以前からお世話になってる人たちはどうしてああも嬉しそうな顔をするんだろうと考えてたら、たぶん僕を認めてくれたんだなと思った。仕事が一丁前だとかそうではなくて、ただ1人の大人の男として見てくれたんだと。仕事絡みとか仲間とかトモダチとかポジション関係なく、世の中の、こう、なんていうんだろう、対等な大人1名として。
そんなことを考えてたらどういうわけか不意にさみしくなってしまった。そういったことを報告する相手はもう冷たい墓石の下にいて、でもそれがこういうことにダイレクトに繋がっていてなんなんだよとか今度は腹立たしくなったりして、終いにはなんだこれって笑えてきた。雪が舞ってた。