黒い人たち
このところ世話になった人や友人の親父さんなどが相次いでお亡くなりになった。ぞろぞろと集まる黒い人たちの輪の中に僕も黒い服を着て入る。泣き腫らした赤い目の黒い人たちに世話になった旨を告げたりお悔やみを申し上げると彼らは口々に「ありがとう」と言って悲しい顔で笑う。誰だって死にたくはないと思うのだけど、彼らはずいぶんあっさりと心臓を止めてしまい焼かれて骨になった。そのたびに僕は黒い人になり長い名前になってどこかへ消えてしまった彼らのことを、そして親父のことを思う。今日そっちに○○さんが行ったよ、というようなことを思う。
とはいえ、僕は輪廻を信じない。しばらく前に観た映画の中で「今から1万年ぐらい前は世界に5000万人ぐらいしか人類はいなかったけれど、それが今じゃ65億人を超えている。ていうことは、もしも輪廻転生があったとしたら1万年かけて魂が130分の1に分裂してることになる」というような台詞があってなるほどなとおもったから。だけども死んだら「無」になるというのもどうにも寂しいから、なんかよくわかんないけどどこかにいることにしたい。パラレルワールド的などこかに。思念体だけが宇宙を飛び交っているような具合が一番イメージしやすいんだけど。
ところで、鳥の目っていうのは色を三原色の組み合わせて認識するのではなくて四つの原色で認識しているらしい。だから鳥たちは雀の模様も僕らが見ているあの柄じゃなくて違ったように見えるらしいし、カラスだって真っ黒ではなくて模様があるのか彩りがあるように見えているらしい。死んでしまった人たちもそういう目で宇宙から葬式に集まった黒い人たちを眺めているのだとしたらおもしろいなと思った。あのやろう悲しそうな顔してる割りに真っ赤な服で来やがったとか、あの娘はピンク着ちゃって年の割りに色っぽいなとか、なんかそんな感じで。