赤ちゃん用品店はじめました

会社の空き部屋を使って新しい商売を始めることにしたのだが青色申告会は失敗であった。とてつもない惨劇が繰り広げられてしまった。気を取り直して再び黄色い表紙の職業別電話帳で世間にはどんな商売があるのか調べてみたら九番目に『青写真サービス』とあったのだが青色にはよくないイメージが残っているので次を見たら『赤ちゃん用品』とあり、これも何かの縁かと思ったので早速赤ちゃん用品店を始めてみようと思う。
世間一般にはあまり知られていないことなのだが実は『赤ちゃん』という生き物は物凄くかわいらしいのである。なんか関節のところとかぶにぶにしているし動きはノロいし「あー」とか「うー」とか言うし軽しとにかくかわいらしいのである。これを利用しない手はないだろう。しかしまあ赤ちゃんそのものを売るわけにもいかない。加えてこのところは百年に一度の大不況だそうで老若男女すべからく貧乏こいてるらしい。欲しいものがあっても我慢したりなかったことにしたりしている。俺が。そんなふうで供給があっても需要がぼんやりしていてモノが売れない社会なのだ。でもそんな状況を打破するビジネスが以外に身近にあることを知っている。

キャバクラという店は、鼻の下をズロンズロンに伸ばしたおっさんが酒を呑みながら若いおネーチャンとお喋りすることを目的として、あわよくば乳を揉んだりできるんじゃないかという下心をベアハッグしながらヌタヌタ出掛けていっても欲求はビタイチ満たされずとも有り金は全て巻き上げられてケツの毛まで毟り取られる店なのだが、こういう店は客が来る来ないに関らず給仕のおネーチャンを店で待機させている。できるだけ在庫は持たないほうがリスクは小さいにも関らずだ。そこで登場するキーマンが呼び込みで「社長!いい娘揃ってますよ!ハタチでFカップのドMちゃん!」とかなんとかスモウレスラーのような娘のくせに体よく煽情して需要を生んでいるわけだ。この謳い文句で最重要な部分はハタチではなくFカップでもなくドMちゃんでもない。『揃ってます』の部分なのだ。すげー可愛いのがズラーっと並んでいる錯覚を引き起こすのだ。魔物の巣窟なのに。ここが"供給が需要を生む"瞬間なのだ。って本に書いてあった。

斯様にして、当赤ちゃん用品店でも店内に赤ちゃんを数名待機させておいて

「社長!いい子が揃ってますよ!若くてムチムチ、涎垂らしておねだりしてきます!」

とか

「先生!まじです!騙しなしです!ジュポジュポおしゃぶりハンパないですよ!」

とか

「お兄さん!パイパンどうっすか?ツルッツルのペッタペタっす!」

とかもうね、そこいらのおっさんがイチコロすぎそうで笑いが止まらない。つかこれキャバクラの呼び込みじゃなくてピンサロのポン引きだ。