母の日恒例企画『お母さんより.2009』

ひさしぶりですね。元気でやっていますか?ちゃんとご飯食べてますか?風呂のドアのゴムみたいなところがカビで真っ黒になったりしてませんか?靴紐が縦結びになってませんか?おまえは昔からズボラだったから洗ったままの洗濯物を部屋の隅に堆く積んだままにして「どうせ着るし」なんて誰もいない虚空に向かって言い訳をするようなメンタルがファンタジーなことになってるんじゃないかってお母さんチョット心配してます。人前では独り言は謹んでね。

ああ、そういえば馬鹿の一つ覚えなカーネーションありがとうね。毎年芸もなくカーネーション送ってくれるからお母さん飽き飽きしてるんだけど予定調和的に嬉しかったって言っておくね。でもね、お母さんお花は好きよ。特にサルビアが好き。お父さんと結婚したばかりの頃はお給料も安かったからなかなかお砂糖が買えなくてね、お父さんが近所で盗んできたサルビアの花を二人で正座してチュウチュウ吸って糖分を摂取していたものよ。暮らしの手帖に投稿したのよ。あ、でもパンジーは嫌いよ。なにパンジーて?いかにも小さくて弱そうでそれでいて可愛らしいみたいな名前が嫌いよ。そのくせ佐藤蛾次郎みたいな格好してるじゃない。癪に障るわ。肉まんの紙を剥がしたときに紙に付いちゃった皮のところを卑しく食べたらべしゃべしゃになっててまずいのよりイライラするけど、天津甘栗の皮を剥いたら薄皮がぜんぜん剥れないときよりはマシかしらね。落花生の薄皮はそのまま食べちゃうから平気だけどね。

毎年この時期になると「こどもの日」には何もしてあげてないのに「母の日」にはお花を贈ってもらったりして、なんだかおまえがお母さんのこどもではなくなってしまった気分になるの。ていうか墓参りに来られたホトケサマの気分に近いかしら。死んだことないからわかんないけど。そう思ってこのまえの5日におまえが大好きだったLOOKのイチゴ味だけを送ってあげようと一箱分全部イチゴ味だけで揃えておいたんだけど、試しに一粒食べたらどうやら全部アーモンド味だったみたいなのよ。『O』が二つあるから紛らわしいのよね。悔しかったから売り場にあったパラソルチョコレートの先っぽを全部ヘシ折っておいたわ。あれの紙を慎重に剥いて先が折れてたときってこの世の終わりみたいな気分になるのよね。でもまあおまえが菓子売り場のキャラメルの箱に片っ端から「食べたら死ぬで」って書いた付箋を貼り付けたイタズラに比べたらお母さんの憂さ晴らしなんか可愛いものよね。おまえはキツネ顔だけどお母さんタヌキ顔だし。

そんなふうにしてお母さん毎年一つずつ年を取っておまえも同じように一つずつ年を取ってるはずなのに、おまえはいつまでも幼いこどものままなような気がするわ。たぶん小さすぎて覚えていないと思うけれど、おまえとまだ一緒の布団で寝てた頃、朝起きて目を開けると目の前でお母さんが起きるのを待ってたおまえがいて、何も言わずにただニコーって笑うから、しばらく布団の中で二人してニコニコしてたことを思い出します。あの頃、そうやっておまえが笑うだけでお母さんの世界は幸せに包まれていました。もうおまえと同じ布団で寝ることはないけれど、おまえの毎日があの頃のように目が覚めた瞬間から輝きに満ちていることをいつでも願っています。風邪ひかないように身体大事にしてね。たまには連絡ちょうだいね。


どう?思わず涙がこぼれたかしら?でもちょっとクサかったかしらね。お母さんこう見えても二級ボイラー技士の通信講座やってるからおまえ泣かすのなんて朝飯前よ。うふふふ。