自首してきました

歳末なのでお世話になった人や会社にお歳暮をお届けに行ってきた。段取りが悪くて午後からあちこちを回ったので陽が傾き薄暗くなるにつれ「ま、間に合わない・・・」と焦り気味に車をギャウンギャウンとドバして行ってきた。助手席に堆く詰まれたドリップコーヒーの詰め合わせ(安物)の箱があらかた捌けた頃、お届け先リストの中でポツンと1つだけ離れた場所にある会社へ陽が暮れる前に参るためにバイパスをブッ飛ばしていたら、なんかやたら赤色回転灯を点けた白黒ツートンの車が行き交っていた。なんかあったんかなと交差点で信号待ちをしてたら、歩道の角に立ってる警官風の男性(推定30代酒豪)がこっちを凝視してるのに気付いた。Theガン見。このやろう喧嘩売ってんのかよと窓を開けて「ばーか!ちんこ!」と叫びたい衝動を抑えてこちらもその警官らしき人物を凝視した。すると彼は肩口に留めてある無線機に何某かの言葉を発して手元の、あれ、なんていうの?、ボード?小さいガバンみたいなやつ、に何かを書き込んでいる。ははーん、さては不法滞在外国人かなんかと間違えてるな?入国管理局かなんかに身柄引き渡しをしようとしてるんだろ、ばかめ、面(ツラ)はこんなんだけどおれは正真正銘の日本男児なんだよ!とか思いつつ信号が青になったので発進したら前方で、あれ、なんていうの?光る棒?ライトセイバーの小さいやつ、ガードマンとか交通整理の人が持ってるあれ、をブンブン振って俺の行く道を塞ぐ年配の警官風の男性(推定65歳趣味は絵手紙)がいた。こっちへ入れと駐車場みたいなところへ誘導され車を停めると若い警官風の男性(推定25歳彼女なし)が近寄ってきた。白い反射板みたいなのが付いたベストの腰のところにPOLICEってある。
「お忙しいところすみません。さっき事故がありまして」
「え?ああ、そうなんですか、へー」
「それで、黄色い車を探してるんですよ。免許証よろしいですか」
「あ、いいっすけど、事故ってどんな?」
「あー、急いで行けって言われて立ってるんでよく知らないんです」
「え?そうなんですか・・・はいこれ免許」
「一応控え取らせていただきますね」
「事情も知らないのに検問かけてどうにかなるもんなんですか?(名探偵気取り)」
「ええまあ。じゃあ車見させていいですかね」
「ああ、どうぞ」
こんなやりとりの後でその若い警官風の男性(推定25歳次男)が車の周りを歩きながらしげしげと車を眺め始めて、左フロントのあたりで足を止めた。タイヤハウスのあたりを執拗に見ている。僕の黄色い車はお世辞にも綺麗とは言い難い風体をしていて後方視界なんかは期待するほうが無理というぐらいオンボロで事故はしてないけど細かい傷(たぶん飛び石)があるしとにかく汚れているので「冤罪とかになったら正月は留置場なのか・・・」と嫌な気分になった。
「すみませんお手間取らせました。ありがとうございました」
「あ、え、もういいんですか?」
「はい結構です。お気をつけて」
という具合にやっぱりシロいものはシロい(黄色だけど)なので無事解放されてお歳暮を届けるべく車を走らせた。ちょっと走ったところで、なんかさっきの若い警官風の男性(推定25歳姉の旦那は将棋が強い)って、本当に警察官だったのか・・・?という疑問が脳裏を過った。だって誘導してた年配の警官風の男性(推定65歳晩酌は芋焼酎の熱燗)はなんかすげー老けてたし警官て定年いくつだよ?事情知らずに検問するか?と次々と疑問が現れては消え次第に不安になっていって、なんか新手の詐欺?オレオレも事故現場みたいなの装うし、3億円強奪事件だって白バイの格好してたし(超飛躍)、そもそも免許証って個人情報満載じゃないか・・・おれ金取られちゃうのかな・・・と物凄く嫌な気分になった。そんなとき前方に駐在所が目に飛び込んできたので車を勢い良く駐車場に飛び込ませた。中の警官数人が机から立ち上がって窓越しにこっちへ向ける視線をひしひし感じつつ建物の中へ入った。
「あのー、さっきあそこで警官みたいな人に停められて・・・」
「はい(厳格な父親が仁王立ちで万引きした子供の言い訳を聞いてる感じ)」
「事故があって黄色い車探してるって・・・」
「ああ、さっき○○町で轢き逃げがあったので検問しているんです(厳格)」
「あ、そうなんですか、説明してくれないからニセモノかと思って」
「(破顔)え、あ、じゃあ、それを聞きに?」
「え?はい」
「いや、黄色い車が飛び込んできたから、てっきり・・・」
「てっきりて!違いますよ!事情を聞きたかっただけです」
「そうでしたかー、あははは・・・」
「あはは、あははは・・・」
そんなこんなで皆さんも車の運転には充分気をつけてください。あと変な妄想ですぐに黒い疑いを持ったり、名探偵気取りも謹んでください。ピーポーくんからのお願いです。