地球温暖化対策日記

まだ6月も半ばだってのに一体全体なんなんだこの暑さは。こんなに暑くちゃ仕事も手に付かないってんだよ、この温暖化野郎め。風も吹かせないっていうのはどういう了見なんだ。いきなり手加減なしで夏本番か。梅雨は無視か。蒸し蒸しするから無視か(うまいねどうも)。
近畿地方の田舎町にある浄土真宗のとある寺。そこに当代随一の色男なお坊さんがいるそうだ。切れ長の目から発するその眼光たるやひとたび照射されればどんな貞淑な女だろうとも心惹かれてしまうらしい。加えてその坊主の声が魅惑のバリトンヴォイスときている。法事でそこの寺に参ってきた女。はるばる嫁に来たもののすぐに旦那を亡くし、若い身空で未亡人となったまだ少女の面影を残す女。町の男どもの好奇の視線に晒されながらも頑なに旦那を想い匂い立つようなその身体は固く閉ざしたまま。そんな女が親戚一同に混じって寺の本堂でお経を上げてもらっている。住職の他にお付が2人。片割れが色男の坊主、横嶋智久だ。
ポクポクチーン、ポクポクチーン。薄暗い本堂でゆらゆらと不規則に立ち上る線香の煙と対照的に単調なリズムで刻まれる伴奏。住職のお経の1オクターブ下をいくバリトンヴォイス。ナンマーイダーブー、ナンマーイダーブー。響き渡る音と声と窓からチラチラと漏れる光に照らされて輝く金色の祭壇。親戚一同軽いトランス状態。中でも未亡人の女のトリップぶりたるや、淫売の魂でも乗り移ったかのように身を捩じらせて小刻みに震えている。次第に座っていられなくなり床にドチーンと倒れた。倒れてもなお恍惚の表情を浮かべ震えている。
色男の坊主がさっと駆け寄り「どうぞこちらで休んでください」と女の脇に腕を回して耳元でアナウンスする。女は促されるまま坊主に寄りかかり本堂を抜けて座敷へと運ばれた。「こちらです」とグランドピアノの左端の鍵盤の音よりさらに低い声で坊主が言い、すっと襖が開けられると予め布団が一組敷いてある。女の鼓動が一段と早くなる。布団のあたりまで女が進んだところで坊主はそっと腕の力を抜いた。途端、ベコーンと女が尻餅をついた。その瞬間、すがるように坊主の腕を引いたものだから坊主もグボーンと布団に倒れた。
息がかかるほど顔が間近に迫った格好で布団に横になる二人が着物を脱ぎ始めるのにさほど時間はかからなかった。女はとろーんとした目、ディズニー映画に登場する全てのメスが「うっとり」したときに見せる、キルスティン・ダンストがたまにするような目で坊主を受け入れた。
女はしたたかであった。今日のようにトランス状態になった檀家を色仕掛けで手篭めにすると悪評高いこの寺を、あの坊主をなんとかこらしめてくれと、お布施と称していいように有り金吸い取られた女の友達に頼まれていたのだった。女は一部始終を予め仕掛けておいたビデオカメラに収めていた。いざというときにアングルが悪いことに気付くとごく自然に身体の向きを変えたりもした。そして好色坊主の決定的瞬間、「いや、やっぱりダメですこんなこと」「なにをいまさら」というやりとりの後に多少強引に捻じ込んでくる坊主の姿を捕らえたのだった。
智久on檀家対策。ばんざーい!ばんざーい!ばんざーい!全部暑いせい。