あの向こうのもっと向こうへ

開け放ったルーフ越しに見える空がなかなかのいい天気。薄い雲の膜の向こう側に透けて見える青でない水色の空が快晴の青々とした空よりもっとさわやかに思えて、空色ってこんな感じの色のことを言うんだけっかなとかなんとかそんな気分でアクセルを少し緩めたりしてたら、日々の鬱屈とした諸々が珈琲にミルクが溶けていくような感じで雲と空に吸い込まれていった。

僕らの自由を 僕らの青春を
気持ちのよい汗を けして枯れない涙を

なにかこう悪循環と呼ぶようなサイクルに嵌り込んで頭と体と気持ちがバラバラになりながら、やたら時間に追われて追い立てられていたのだけど、こんなもの屁でもねえよ騙し騙し過ごしていたら知らず知らずのうちにブレーキペダルをぐっと踏み込んでいたようで、宇宙の向こう側まで飛ばしたいって思ってる気分が助走もできないほど立ち竦んでしまっていた。

幅広い心を くだらないアイディアを
軽く笑えるユーモアを うまくやり抜く賢さを

懇親会。名刺バラ撒く。懇親会の後の二次会。40代半ばで独身のおっさんと女性のどこを見てるかどこに惚れるかについて話をした。正直もう面倒臭いって言ってた。色気がねえなあ。三次会はフィーリッピンのオネーサンの店。「スースーマサラ」は「おっぱい舐めたい」だそうだ。ちんこの大きさはどうでもいいの大事なのはハートよって言ってた。携帯の待ち受け画面が可愛らしいマリア像とキリスト像で蝋燭も点っててなんだか和んだ。そのあと久しぶりのいつもの店。閉店間際で眠そうなオンナノコたち。他人のボトル代も割り勘。気が遠くなる。

眠らない体を すべて欲しがる欲望を

たぶん。僕を取り巻く世間の人たちが『僕』を見始めたんだと思う。息子さんでなくて僕自身を。おっかなびっくり接してた人たちが言いたいことを手加減なしで言い始めたんだと思う。一生やってろという言葉を愛想笑いに変えて軽やかに僕は走り始める。もうヘドロは空に吸い込まれたからブレーキペダルをリリースして快適なスピードで走り始める。難しい事はわからない。
引用部分:イージュー☆ライダー/奥田民生