母の日特別企画『お母さんより』

元気でやっていますか?ちゃんとご飯食べてますか?風呂の排水溝に髪の毛なんかが絡まってませんか?便器のふちの裏側に縮れ毛がくっついたりしていませんか?おまえは昔からだらしなく弛緩しきった寝顔で「もう食べられないよ」なんて寝言を言ってたからお母さんチョット心配してます。寝言は仕方ないとしてもその他は気をつけてね。異性関係とかお金の貸し借りとか。
ああ、そういえばカーネーションありがとうね。右へ倣えっていうか世間がそうしてるからカーネーション送ってくれたんでしょう?嬉しかったって社交辞令として言っておくね。でもね、お母さんお花なんて貰ったの何年ぶりかだったから、どうやって食べたか忘れちゃったの。たしか天麩羅にしたような気がしたから今夜はカーネーションの天麩羅にしようと思います。おいしくできたら宅急便でおまえにも送ってあげるね。おまえが大好きだったカレーのルウが乾いて膜になったところと、アメリカンドックの棒の根元にこびり付いてる焦げた皮のところと一緒にタッパーに詰めて送ってあげるね。しらすのパックに入ってる小さいタコとかカニはさっき食べちゃったの。
こうしておまえと離して暮らしていると昔のことをよく思い出します。小学校の遠足のときに忘れ物がないようにって手に持っていくものを一緒に書いたわね。そのうちおまえは寝てしまったけれど、お母さんバナナはおやつに入るのか深く考えてて、その考察を寝ているおまえの身体に書き出していったら気付いたときにはおまえが琵琶法師みたいになっちゃってて滑稽だったわ。でもね、おまえの大事なところがおばけに取られたら可哀想だと思って、ちゃんとお母さんソコにも念仏書いておいたのよ。今のおまえがあるのはお母さんのおかげよ。感謝しなさいよ。
まあ、いろいろ言いたいことはあるけれど、お母さんおまえのことちゃんと愛してるのよ。おまえがお母さんの元に生まれてきてくれて本当に嬉しかった。おまえはお母さんに神様がくれた宝物なの。お母さんにとっておまえはおまえただ一人だもの。お花ありがとうね。元気でね。

どう?泣いたかしら?思わず鼻の奥がツーンとしたかしら?お母さんもなかなかやるでしょう。こう見えてお母さんペン習字の通信講座やってるからおまえを泣かすぐらい朝飯前よ。うふふ。