トマトジュース日記

たまにトマトジュースが飲みたくなる波がくる。無性に飲みたくて飲みたくて飲まずにはいられないビッグウエーブがくる。東宝映画のオープニング映像のようにざっぱーんとくる。この日は、なんちゃらセミナーの講師が「これはビジネスチャンスですよ!」「コラボレーションなくしてありえないですよ!」なんていう話をしてる最中にきた。僕は退屈な話を真剣に聞いているふりをして綺麗なおネーさんのことをぼんやり考えていたから、トマトジュースと綺麗なおネーさんのコラボレーションか・・・なんて思っていた。そうだ、この退屈極まりない講演が済んだらおっさんを誘っておネーさんの店に行ってトマトジュースを飲もう。そう思ったらウキウキしてきた。
トマトジュースといえばリコピンだ。活性酸素と勇猛果敢に闘うリコピン。貧しい夫婦の元に生まれ老夫婦の養子となり穏やかに育てられたリコピン。やがて少女は風光明媚なその地に悪玉コレステロールの魔の手が迫ってきているこを知る。それとは別に治安部隊であるはずの活性酸素のクーデターも勃発した。類まれなる強靭な中指と親指を持つリコピンは老夫婦に別れを告げ平和を手に入れる戦いに挑む。実際彼女は無敵であった。迫る敵の眉間目掛けて鋭く中指を打ちつけると敵は額を押さえてもんどりうった。そう、リコピンの必殺技はデコピンだ。
夜の帳が下りる頃、ネオンサイン煌く東京銀座の地で血で血を洗うような女の争いが起こる。長きに渡り指名ナンバー1として店を支えるビタミンさんと人気急上昇のリコピンの熾烈な指名獲得合戦だ。ビタミンさんはいつも黄色の着物を着ていてシャンパンしか飲まない。政治経済に厭味なほど明るく「バージュ・アル・アラブ*1って世界唯一の7つ星ホテルなんですってね。どなたか連れて行ってくださらないかしら」などど臆面もなく言ってのける高慢チキな女でもある。ちなみにものすごいボインだ。翻ってリコピンは身長が148cmぐらいしかなくていつもピンク色のワンピースを着ていて微乳の癒し系で「わたし初めてのときにお尻にいれられちゃったんですよー」とか真っ赤な顔で言うほど天然だ。控え室で「どうせあんた枕営業してんでしょ」とビタミンさんがリコピンに食ってかかる。「わたし枕なんか売ってません」とリコピン。「とぼけんじゃないわよ!ムキー!」激昂したビタミンさんがリコピンに掴みかかる。騒ぎを知ったチーママのカルシウムさんが止めに入る。カルシウムさんは銀座で5本の指に入るほど骨太だ。
そんなことをポワワワーンとしているうちになんちゃらセミナーは粛々と進行していって、業種別の分科会というものに突入していったのだけど、そこで金儲け至上主義みたいな話をされてグワングワンと眩暈がしてしまい綺麗なおネーさんどころではなくなってしまった。セミナー終了後の帰り道に自販機で買ったトマトジュースを飲むのが精一杯だった。