彼女が春を売り僕に冬が来る

薄ぼんやりした部屋。ベッドの上で横向きに寝ている俺。「生でもいいよ」と向き合って寝ている女が言った。あんた誰?と思った次の瞬間、ああ、これは夢なのかと夢の中で思った。で、誰なんだろうと顔をまじまじと見てみたのだけど靄がかかっていてよく見えない。性的に欲求不満なのかしらと目覚めた後で思ったけれども、夢の中での僕は「あっそう」と気のない返事をして女の上に乗っかった。寸前で女が「10万円」と言った。言ったというか頭の中に直に警告してきた。ああ、あれは自制心とか箍(タガ)的なものなのかなと目覚めた後で思ったけれども、夢の中での僕は「高いよ。5000円でいいじゃん」と交渉していた。すると女は「じゃあ間を取って8000円」と言い、僕もそれならと了承した。はてさてここからは三流ポルノ小説になるはずなのだけど、次のシーンは置屋のような和室の布団の上になっていて、着崩れた赤い着物姿(夢はいつもカラー)の女が寝そべっている僕の隣に座り「人に騙されて大きな借金があるの」なんて言ってる。僕は寝そべったまま「いくら?」と聞くと女は「700万円」と言った。
夢の中にいることを自覚しながらまるで映画かなにかを見ているように僕は自分がなんて言うのかわくわくしながら待っていた。夢の中で僕は「じゃあ内臓売ればいいじゃん」と言って女の腹のあたりに腕を突っ込んで臓器を素手で取り出そうとし始めた。内臓の件はわからないけれど素手で腹に腕を突っ込むのはきっと電王さんのそれなのだろうなあと目覚めた後で思った。女は片方の腕で顔を覆ってじっとしている。はらわたをまさぐっている僕は女の中がカラッポになってて焦り始めた。ない!ない!と腕をぐりぐり動かすと徐々に腕に圧迫感を覚えた。腕が千切れそうなほど圧迫されたので引き抜こうとしたのだけど締め付ける力が強くて抜けなかった。必死でじたばた身体を動かしたのだけど抜けなかった。もう夢の中にいることを忘れていた。女は焦る僕を見て不敵に笑っている。しまった!罠だった!と思った。どういう罠なんだよ意味わかんねえよと今は思う。急に寒さを感じた。腕は抜けない。そのうち視界が白くぼやけ始めた。

目が覚めたらこんなんだった。