あいつらのハナシ

簡潔にまとめると、おっさんが自業自得でクネクネした夜のハナシ。以下無駄に長いので注意。
この前、名古屋で遊んでいるときに携帯が鳴った。待ち受けを覗いたら発信者は中学の同級生だった。いつ以来か忘れたぐらいひさしぶりの連絡。電話に出るとちょっと元気なさげな彼の声が聞こえてきた。忘年会ってわけじゃないけれど今度集まって飲むから都合はどうかという。彼の普段は非常に気遣いのできる男で礼儀も正しいし面倒見もいいのだけど、ひとたび酒が回り始めると途端にロクデナシになってしまう。よほど普段抑圧されているというかあれこれを押し殺して生きているようで乱れ方が相当酷い。そのせいで「ロクデナシ」のレッテルを貼り付けて彼の元を去っていった連中も少なくない。僕だってあまりにも酷く酔ってるときなんかはその場に置き去りにするけれども、彼の実直すぎる生き方は決して真似できるものではないし、同情なのかわからないけれど彼の背負ってる苦労なんかを思うと、飯に付き合うぐらいで彼のチカラになれるのならといった具合で予定も確認せず「行くよ」と返事をした。

待ち合わせ場所に向かう途中で取引先の人から、明日の午前中に打合せをしたいから資料を揃えておいてくれという連絡が入った。飲み会をキャンセルして準備に取り掛かっても深夜になりそうだったから、どうせなら徹夜覚悟でやりゃあいいやと思いそのまま待ち合わせ場所に向かった。仕事が間に合わなかったときのことを考えればダメな大人かもしれないけれど、こういう選択を迫られると両方取ってしまう欲張りな貧乏性だからしょうがない。つうかある程度計算ができてる状況だから言うほど器量はない。電話くれた彼と合流して遅くとも23時には帰る旨を伝えて予約してあったタイ料理の店に向かった。店のすぐ近くでもう一人と合流した。あと3人来る予定だったけれど先に店に着いた3人で再会の乾杯をして飯を食い始めた。

電話をくれた彼は辛いものが好物なのだけどそこの店は初めてだそうで、出てくる料理全てを「うまいうまい」と喜んで食っていた。もう一人も僕も汗を流しながらトム・ヤムクンをズルズルと飲んで笑っていた。早いピッチで飲み干される生ビール。電話の彼はごきげんで近況なんかの話をして、まるで彼の親にでもなったような気分でうんうんと話を聞いていたら残りの3人がやってきた。テーブルに置ききれないほどの料理が並べられて宴会っぽくなり、それぞれがそれぞれの近況を話したり、あんときこうだったとかああだったとか昔の話をしたりしてた。僕はその輪の中にいて、こいつらのことをなんて呼ぶのだろうなとか考えていた。僕も含めて4人は中学の同級生だけど、あとの2人は高校を卒業してから知り合った。それでもああいう輪の中からは外せないポジションにいるというか、いないと輪が千切れてる感じがする。

22時少し前にタイ料理の店を出た。バーへ行くというので少し悩んだけれど23時までなら大丈夫だと思ってバーへも行った。もうこの頃から電話の彼は酔いが回り始めていて声が大きくなったりしていた。バーのマスターは僕の幼馴染で独りで行くことが多いからカウンターにしか座ったことがないのだけど、せっかく人数がいるのだからってボックス席に入った。そこでウイスキーを舐めたりして割りと真面目な話をした。生き方とかそんなん。いつも二軒目ともなると電話の彼はたいていグズグズになっていくのだけど、この日は酔ってはいるものの背骨は残ったままだった。一軒目でしっかり食ったからアルコールの回り方がゆるかったのかもしれない。僕の目には酔って醜態を晒して放っておかれたくないっていうように見えた。いつもならはた迷惑な笑い声もどことなく乾いているように聞こえた。それがなんか寂しかった。いや、酔い方としては丁度いいぐらいなんだけど僕たちにまで気を遣っているような感じが寂しかった。

23時を少し過ぎたあたりで解散になってイチ抜けとはならなかった。電話の彼以外にも23時になったら帰って仕事すると伝えてあったから気を遣ってくれたのかもしれない。6人のうち2人はタクシーに乗り込み、電話の彼ともう一人はワインの店に行くと言い、僕と帰ると言ってたもう一人ももう一軒付き合うことになってそれぞれと別れた。会社へ戻って仕事を始めた。一緒に帰ると言ってた娘(娘って歳でもないけど)が別れ際に見せた顔がなんともいえず、なんか言いたいことがあったのかなって思ってたらやっぱり電話が鳴った。別れた後どうだったとか他愛もない話をして最後に「がんばれ」と言われた。ちょっと泣きそうになった。眠くなってネットを見たりなんか食ったりしながらどうにか約束の時間までに資料を間に合わせることができて打合せに行った。病的に真っ黒い目の下のクマとボサボサの頭と不精髭の酷い格好だったけれど打合せも上手くいって欲張った甲斐があった。

こんな長く書くつもりもなかったんだけど、当てはまる言葉が見つからない関係を分解するつもりで書いてみたら長くなっちまった。ても、あいつらをなんて呼ぶのかわかんないんだ。『友達』とか『仲間』とか言葉にすると嘘臭くてさ。もうちょっと大事なものなんだけど、またその「大事」ってのも嘘臭いんだよね。きっと自分の中の嘘臭さが臭ってるんだろうね。