なぜか怪談話に花が咲いた夜の日記

行きたくもないカラオケに連れていかれて勝手に歌を入れられて歌わされて、なんか勝手に盛り上がってる様子を白けた感じでぼんやり眺めていた。幽体離脱した自分が天井のあたりからその白けたおっさんを眺めてるような感覚になって、その様がとても不憫でならなかった。やがて退室時刻を告げる内線電話が鳴った。延長したらブッ殺すという殺気を湯気のように立ち上らせていたら解散ということになったので、やれやれと部屋を出た。カラオケ店から出ようとしたら、この後どうしますか?と尋ねられたので不機嫌そうに「別に・・・」と言ってみた。
という具合に誘われたので女郎のような格好したオンナのコが接客する飲み屋に行ってきた。昭和30年代か40年代前半に建てられたと思われる民家のような建物を改築した飲み屋で、そこかしこが磨き込まれていて店の雰囲気はかなり良かった。背の低い衝立で仕切られた座敷席に案内されてインテリアだとか調度品を眺めていたら、その、女郎っぽい格好をしたオンナのコがやってきた。派手な色の着物を着崩したような感じに襟の後ろっていうか"うなじ"のところをガバっと開けているので背中の1/3ぐらいを露出しているような格好だった。
感想を率直に言うと「だらしない」のだ。着物はパチッと着るべきだと思った。着物姿になぜ感銘を受けるかといえばそのパチッと感からなんだと思う。いやらしい視線を拒絶するように一分の隙もなくパチッと手前が重なり合ってる感じがいいのに。ところが隣に座るアバズレときたらどうだ、だらしなく背中やら胸元を露出して破廉恥極まりない。その煽情的な居住いに鋭く反応した如意棒で危うく座卓をひっくり返すところだった。だらしなくてもいいかなってちょっと思った。
オンナのコたちはみんな裸足だった。正座したりお母さん座りっていうか、脚を揃えてくの字にするっていうか冷凍エビみたいな格好っていうか、こう、横にずらして座ったりしてたんだけど、足の裏って人それぞれ個性があるのなって気付いた。白くて柔らかそうな人もいれば、ちょっと黄色くて固そうにコチコチしてる人とか、皺っぽい人とかみんな違う。そういうのを意識するのはダブルミーニングで"いやらしい"のかもしれないけど、なんかちょっとした発見をした気分になって楽しかった。隣のオンナのコの足の裏はゴツゴツしてたから「これは働き者の足の裏じゃ」ってユパ様気取りで言ってみたんだけど、露骨に嫌な顔をされたのでよい子のみんなは言っちゃだめだぞ。そこに触れちゃだめだぞ。ゴツゴツの人がいたら見て見ないフリをしようね。