人に勧めたらサッカー映画だと思われた

誰しも何かしら癖のようなものがあり、きっとそれは精神とか感情とか内面的なものがシグナルを発して無意識のうちに身体を動かしているのだと思う。実のところこの身体もそういう反応を見せることがある。過酷な条件の仕事が舞い込むと気絶するとか、夜中になると部屋の隅で体育座りをしているだとか、女のコと目が合った瞬間にビッグマグナムが火を噴くとか、墓場に行くとボクにしか見えない人と会話をしているとか、そこまで特異ではないにしろちょっとした癖がある。ある程度の緊張状態になると奥歯を噛んでいるっぽい。曖昧な言い回しなのはそれこそ無意識でやっているからで、あるときビデオでその姿を確認したときには、なんか未知の生命体でも飛び出すんじゃないかぐらいの勢いで顎の皮膚が蠢いてて薄気味悪かった。100年の恋も冷めるというか、さっきまでアフンアフン言ってたのにそれ見た途端にパッサパサみたいな見た目であるからしてすぐにでも治したいのだけれども、なにしろ無意識であるから始末が悪い。という難癖を抱えているので『指しゃぶり』なんて奇特な癖を持つ主人公に対して同情を禁じえなかったし、ひいてはこの映画に未来が託されていると期待した。ちなみにビッグマグナムは誤謬です。

もしかしてそうかなとも思ったけれど『指しゃぶり』はアイキャッチでしかなかった。ちょっと気弱な男のコが悩んだり躓いたりしながら成長してゆくという青春映画だった。ようするに顎関節症になるほど奥歯を噛むおっさんには何の参考にもなんなかった。緊張緩和について描かれている場面もなかったわけではないけれど。そんでも、キアヌ・リーブスがいい感じの役どころで出演してて、ラストあたりで少年と会話するシーンなんかは「現代」の生き方を示唆するような内容で、ふーん、そんなもんかもね、と思ったりなんかしたりして。