虎の威を借る狐の尻尾の蚤

先週は大きな会社の大きな仕事を末端でお手伝いしていた。大きな会社っていうのはいっぱい人が働いているから誰かが休んだり別の仕事をしたり会社を辞めたりしても大丈夫なように、基本的に「誰がやってもいい」状態で仕事が動いている。だから書類もたくさんある。たとえ僕がいなくなってしまっても別の誰かが書類を見て進捗状況を確認すれば仕事自体は問題なく進められていく。それがとても新鮮だった。ついでにお客さんにしても基本的に「誰がお客さんになってもいい」状態になっていて、ある人がダメでも別の人を見つけてくればあまり困らない。顔のない名前もない誰かがいてくれさえすればいい。もっと言えば、僕とお客さん(候補)との間に大きな会社の名前が出てくればたとえ親の仇であろうとお互いが何者であるかどうかなんてことは関係なくなって、ただ大きな会社の大きな仕事の末端に関わる二人、というようなことになる。
大きな会社の名前っていうのは便利だ。「○○の」と名前を出すだけである程度の信用が得られ見ず知らずの人に話を聞いてもらえる。でもその金看板に泥を塗るのも簡単だ。たとえば僕が大きな会社の名前を出しつつ横柄な態度だったり無茶なことを言ったときに、相手が不愉快に思うのは僕個人、僕の会社というよりは大きな会社に対してだ。だから大きな会社の仕事っていうのは気楽だ。お客さん(候補)に対して「うるせえハゲ」とさえ言ってしまえる。言わないんだけど。逆に満足されたとしてもそれは僕の、僕の会社の手柄にはならず大きな会社のものになる。そういう仕事をしている皆さんは一体自分は誰なんだろうとか思うんだろうなと思った。そんなだから残業なんてまっぴらごめんと思うのだろうし、定時に上がって趣味に時間を使いたいとか思うんだろね。だけどそっちの方がパートタイムな奴隷のような気がしないでもないけど。
とにかくエアコンのない車で外回りすると暑くてくたばりそうになるから、毎日毎日、日が暮れるのが待ち遠しかった。むしろ定時過ぎのほうが仕事する気になったっていうか。