夏の日曜日の陽が沈む

暑さを文字通り洗い流すような激しい夕立が雷を伴って真っ黒い雲から放たれ大粒の雨が地面で飛び跳ねる様子を、まるでお祭り騒ぎだなあ、なんて窓の外を眺めていた。祭りの終わりを告げる花火が連続して打ち上がるように、稲光がビカビカと明滅してラストの稲妻がすぐ近くの避雷針目掛けて打ち下ろされた。凄まじい轟音と辺り一面が閃光に包まれた。
黒い雲のキャラバンはゴロゴロ言いながら東の街へと旅立っていき、空を覆う雲の隙間から水色の空が見てとれた。名残惜そうにパラパラと降っていた雨がようやく止むと涼しい風が吹き始めて、半ソデ短パン姿にはちょっと肌寒かったけれど車の幌を畳んだ。人も車も涼しいぐらいが調度いいようで高速道路をいい感じでチンタラ走った。西の空が白くなってきていた。
僕は夏のああいう夕焼けのない薄い水色の空が好きで、陽が翳ると青い空が白く煤けていって気付かないうちに紺色になっていく空が好きだ。夕焼けも綺麗だとは思うけれど。そうやって昼と夜の境目が曖昧なときは、サザエさんが始まる頃に感じる日曜日の夕方の匂いがしなくて寂しくないから。なにかこう浮き足立つような喪失感を感じないまま夜を迎えられるから。
そうはいってもこの頃は日曜日を楽しみに待っていることも少なくなったし、明日は月曜か憂鬱だな、とかそういう感覚もまるでない。毎日が地続きでグルグル回って月曜も金曜も日曜もヘッタクレもない感じになってしまっている。日曜日の夕方の匂いを寂しく感じるのは子供の頃の記憶なんだろう、若しくは学校や会社に通っていた頃の名残りとかかもしれない。
夕方の明るさがフェイドアウトしていってヘッドライトを点けるぐらいまで夜が侵食してきた頃に高速道路を下りてバイパスを走っていると小さく光る星を見つけた。他にはないかなと視線を巡らせながら車を走らせ続けたけれどその小さな星がポツンと一つ見えるだけ。しばらく走って信号で停まったときに真上を見上げたらいくつかの星が光っていた。さようなら日曜日。
こんどの日曜日は久しぶりに楽しみにしている日曜日だ。