おっさん心と秋の空の日記
昨夜から今朝にかけて断続的に強く降っていた雨が上がって雲が去った後に見えた空の色は、ついこの間までの色より少し斑なような照りが薄いような秋の空の色になっていた。いよいよ夏も終わるのだなあとなんだか寂しく思った。寂しく思ってみたもののこれまでに夏だからといって何某かの恩恵(特に色恋沙汰のあれこれ)を受けた記憶もなくて、むしろ涼しくなって過ごしやすくなるのだから秋の気配っていうのは歓迎すべきことなんだと思いなおした。
海が見えるようなところに住んでいたらまた見え方が違うのだろうけど聳え立つような山に囲まれていると、この秋の高い空の奥行きが視覚的によくわかる。脳天の方向ばかりじゃなくて仰角が小さい方向の空までぐっと奥行きが感じられる。稜線の向こう側まで空が回りこんでいることが強調されるのは、山の木々の緑が知らない間に赤味を帯びていて、それと空の色とのコントラストも関係しているのかもしれないけれどとにかく空が丸くなるのだ。
小学生の頃、天動説と地動説のあたりを社会科かなにかでやってるとき教師が「どうして地球は丸いってわかったか?」と問い掛けた。「空を見れば丸いってわかるじゃん」と答えたら「空を見ただけじゃ丸いなんてわかんないよ」と言った。現代では地球が青くて丸いのは当たり前に知ってることだからそういう刷り込みで丸く見えてるんだと教師は言った。クラスのみんなも教師の意見に同調していた。僕の目には空が丸く見えていたのに。
海原に白い尾を引いて船が進んでいくのを遥か上空から眺めているように、青い空に白い筋を残しながら飛行機が飛んでいくのを頭上に見上げる。飛行機雲は稜線から垂直に立ち上がって頭上に近づくにつれて角度を徐々に水平に落としている。ほらみろやっぱり空っていうのは丸いじゃないかあの野郎。と思ったところで足元にある地面の底が丸いっていうのは刷り込みだってことは否定できないなって思った。反対側でサンバ踊ってるなんてわかるわけない。