ふつうの日記を書くつもりだった

事務所に営業さんが手土産持ってやってきたんですけど、なんか辛気臭い顔をしてるんでどうしたのか尋ねてみたら、「聞いてくださいよー(中略)で、ウチが煮え湯飲まされたんですよー」という話だったのだけど、あまりにも自分とこに関係のない話だったのでどう言葉を掛けたものかちょっと考えてから「煮え湯飲んだら猫舌でなくても死ぬよね。喉とか火傷して呼吸できなくなって」と言っておきました。彼は鳩が豆鉄砲食らったような顔してましたけれども鳩に豆鉄砲をぶつけたことがないので本当にそういう顔なのか自信がありません。そもそも豆鉄砲という鉄砲がどんなものかわからない。豆が出そうだってことぐらいしか。
きっと公園かなんかで鳩が寄って来て、あー鬱陶しいなあもう!とかなったときに腰のホルスターから颯爽と抜き取ってぶっ放つと1秒間に20発ぐらいパパパパパって豆が飛び出てそこいらの鳩野郎は一網打尽みたいな高性能オートマチック拳銃みたいなやつなんだけど殺傷能力ゼロなので当たっても鳩は死ななくて、こう、パパパパパっていう音にびっくりした鳩が飛び立とうとするんだけど弾道があちこちに見えて、あ、今飛んだら危ないって思って飛べなくて中腰のまま(中腰て?)クルックーだかポロッポーだか言ってる風景が映って、その後にその拳銃がクルクル回りながら拡大になって、かぶせるように毒々しいピンク色したギザギザの吹き出しの中に緑色で4,980円ってのがドーンってなって、画面が切り替わると迷彩服を着た金髪少年が2,3人で芝生かなんかの上をその拳銃持って右往左往してて小太りな子が撃たれて倒れるんだけど、すぐさま撃った少年らが駆け寄っていくとみんなでゲラゲラ笑ってて、下の方に「殺傷能力ゼロですのでお子様に命中しても安心です」みたいなテロップが出たりなんかして、そんでまた画面が変わると今度はさっきの金髪少年たちがダイニングで座ってサラダボールの中の豆を満面の笑みを浮かべて鷲掴みで食ってて、さっきの小太りの子なんかはおたふく風邪かってぐらい頬張ったりなんかしてるとまた下の方に「ご使用になられた豆は食べられます。遺伝子組み換え大豆は使用しておりません」とかテロップが出た後でまたクルクルって拳銃拡大で例の4,980円がバーンでCMが終わるの。
そんで、注文して豆鉄砲が届くと包みの中には葉書が入ってて、ビーンズガンクラブ入会案内ってなってて入会金が30万円ぐらいで、会員特典としてプレミアム豆鉄砲が買えるってアナウンスの隣に、スミス&ウェッソンとかコルトとかニューナンブとかいろんな種類の精巧なモデルガンの写真が添えてあるの。1挺の値段はだいたい3万円前後でいいや。そんで、お友達紹介キャンペーンもやってて一人紹介すると定価の半額で買えるようになってるの1挺だけ。でも写真には全部「入庫待ち」って小さく入ってるの。きっと全国で2000人ぐらい入るだろうからざっと50億ぐらい荒稼ぎしたら高飛びすんの。最初にタイに寄って整形してからベトナムあたりから大陸に入って陸路でヨーロッパへ。豆鉄砲の在庫も抱えての旅でいろんな国の子供たちに適当な値段で売ったりして一見大金持ちに見えないような偽装工作もしつつ。そんでも中近東でイスラム原理主義の人たちに捕まって豆鉄砲が没収されちゃうわけ。そうするとなんかテロ行為をしようとした過激派みたいなのがパパパパパって撃つと豆が出てきて誰も死なないの。平和の使者扱いされたりすんだけど金巻き上げてトンズラしてるものだから表には出られなくて、また名も無き旅人に戻ってイギリスを目指すの。そんで着いたら金にモノを言わせてローワン・アトキンソンと対面してめでたしめでたし。