無免許モラトリアム

だめだだめだーってクサって会社から帰ろうとしてトイレに行ってションベンしながら窓の外を見上げたら月と星がこんなんなってた。笑ってやがる。そしたらなんか途端に馬鹿らしくなって力が抜けた。よくオンナのコが「おいしいもん食べて元気出た」とか「好きな音楽聴いて」とか「テレビ観て笑って」なんつって言ってるのを聞いてて、そんなもんなんの解決になってねえじゃんと思ってたんだけど、昨夜の月を見たらなんかそのキモチの変化がわかった気がした。ほんとかどうかは怪しいもんだけど。
晩飯を食べて風呂に入って会社戻って仕事しようと思ったんだけど先のことが気になってぼんやり考え事をしてた。あー、なんか・・・と思ってずっと前に買ったきりになってたリリー・フランキーの本を棚から引っ張り出してきて読んだ。あの人は才能あるなと思った。なんつうかグズグズになってる思考の澱みみたいなものをカッコ悪く見せるのが上手いというかそういう人間の逃げ道を絶って動かざるを得ないように仕向けるのが上手い。おそらく体験からきてんだろうけど。今がドン底と思ってたってそれに慣れちゃってまだまだ堕ちれるんだ言い訳上手な輩は。

難しいのは考え方を変えることじゃなく、暮らし方を変えることなんだ。頭の中と口先だけで行ったり来たりしてるだけじゃなく、身体を動かして生活自体を変えてゆくしかない。

ははは。痛いところ突かれた。読み終わった本を閉じて仕事しながらそれでも横目でインターネットに書かれている誰かの言葉をチラチラ見てたらなんだか馬鹿らしくなってきた。こんな小さな箱から出てくる言葉に一喜一憂して馬鹿みたいだ。この箱の向こう側に血の通った人間がいるならこんなもん眺めてないで会いに行ってそいつの血の通った言葉を聞いたほうがいい。前にインターネットの人に「君は簡単にネットの垣根を飛び越えるよね」と言われたのだけど、この箱を通したやりとりなんかたかが知れてる。せいぜいが口の上手い奴がチヤホヤされて口の下手な奴がよってたかって叩かれるっていうそんな出来事しか起こり得ない。向こう側の奴とどうにかしたいなら車に乗り込んでキーを捻るべきだ。ここに使う時間なんてのは所詮が場代で雀荘の1時間いくらみたいなもんで、この手牌に『北』をブチ込んで役満に仕立て上げてもらうにはやっぱり顔を付き合せないとダメなんじゃないか。そんなふうに思ってる。
そんなこんなで眠くてどうしようもなくなるまで仕事して二度目の帰宅。携帯に繋がったイヤホンから椎名林檎の「同じ夜」が聞こえていた。グジグジ悩んでたってゲラゲラ笑ってたって『空は明日を始めてしまう』のだ。その明日がちょっとでも素晴しいように今日動く。ちょうど家の前で鉢合わせた新聞配達のおじさんから直接朝刊を受け取って「おはようございます」って挨拶した。イヤホンしてたから思ったより大きな声が出たみたいでおじさんびっくりしてた。吸ってた煙草を玄関の前にあるドウダンツツジの根元でもみ消して寝て起きて明日になった。昨日よりマシ。

ボロボロになった人へ

ボロボロになった人へ

カッコ悪くて嫌なんだけど黙ってできない性質なんだよね。ははは。