インソムニア日記

割とヒマになってきた。ヒマであるということは即ち仕事がないということであってこの状況がズッと続くとなると胃袋の中でピロリ菌が大暴れなんかして痛ましい惨劇が起こってしまうので、ヒマなのもほどほどにということなのだけれども頭の中はいついかなる状況下においても割りと忙しいもので、朝起きてから夜眠るまでの間に非常に雑多なことを入れ替わり立ち替わり考えていたりする、こう見えても。どう見えてるか知らんけど。
さて寝るかとベッドに入り夏掛けの薄い布団に包まってモネモネしながらあれこれ思案しているとあっという間に時間は過ぎていって、今ではもうビデオデッキサイズのデジタル時計としてしか用を成さないベッドの足元にある棚の上で若干埃を被っているビデオデッキの小窓で時刻を確認するとベッドに入ってからモネモネし始めて3時間とか平気で経過していて慌ててカーテンの隙間から外を覗き見ると、この時期午前3時ぐらいからすでに東の空がトマト色に染まってゆくのが見えたりするものだから困る。何が困るって何時間もあれこれ考えていたことが微塵もまとまりを見せないし役に立ちそうもないからだ。とっとと眠るべきなのだ。
人間は歩きながら考えると良いアイディアが浮かぶけれど車を運転しながらだったり音楽を聴きながら歩いている場合はその効果が得られないとかなんとかどこかの大学教授が言ってたらしいのだけど、車を運転しながらぼんやりと考え事をするのは楽しい。ところが原油価格の高騰のせいでドライブという行為がえらい贅沢なことになってしまった。NYの市場で値がドカンと跳ね上がる仕組みだと聞いて「くっそうユダヤ人め!そんなにガソリンが好きなら頭からぶっかけて火を放ってやる!」なんて物騒なことをワールドワイドウエッブ上に公表するとエシュロンという昔のシャンプー*1みたいな名前の通信傍受システムで感知して、たちどころにCIAやFBIやNHKやKFCなどの各種団体職員が黒塗りのシボレー・タホで駆けつけて連行されてしまうらしいのだけど、あの車こそ燃費が悪そうでかえって気の毒だから泣き寝入りするしかない。
というようなことについて深夜に会社で考えを巡らせているのだけれど、マンションのようなビルの1室で開業している精神科医を訪ねるつもりが間違えて同じフロアの税理士事務所に行ってしまい、部屋の造りが事務机を挟んで対面に座って話をするという似たようなものだったのでそうとは気付かず税理士に自身の性の悩みを打ち明けてしまう美人妻というフランス映画をこの前観たなと突然思い出したので、自分のところにもいきなりフランス美人がやってきて赤裸々に性的な告白をされてみたいなと思った。訳知り顔で休憩室のソファの上に寝るよう促して、諸悪の根源であるところの悪魔の紋章が表皮に浮かび上がっているやもしれん、とインチキ霊媒師のような口調で不安感を煽って衣服を剥ぎ取り、うーむ、これは、などと言いつつ胸を執拗に触った挙句に「これは体内で成敗する他に道はなかろう。うむうむ」と言うが早いかパンツを脱ぎ「清めなされ」とか言って口元へ、しかる後に「儀式を始める」と言って交わったところで「アンバーサーワーザーメンダー」とか適当な念仏を唱えつつ腰を振って「参るぞ!」と叫んで爆ぜるという、三流ポルノ小説を凌ぐ古本屋の隅っこで日焼けしたパッケージに50円の値札が貼られた昭和のアダルトビデオのような筋書きが浮かんだりして、眠たほうがいいなと心底思った。

*1:エメロン。若者には通用しないことは承知している