天使の分け前

もう随分前の話なのだけど、土曜日の夕方は仕事をしながら東京FMのAVANTIを毎週聴いてた時期があって、都度サントリーのCMで『天使の分け前』のことが流れていた。

ウイスキーは、長年樽で熟成している間に少しずつ蒸発し、10年も経つと当初の8割程度の量になってしまうんです。ウイスキー独特の味わいと香りが生まれるためには仕方のないことなのですが、昔の人たちは「天使に分け前を取らせて(飲ませて)いるからこそ、我々は美味しいウイスキーを手に入れることができたのだ」と考え、樽から減った分のウイスキーのことを「Angels’ share(天使の分け前)」と呼んできたのです。
サントリー山崎蒸留所Blog

というようなことを突然思い出す出来事があったので絵日記にしてみた。
普段の食事はメイドのミランダさんが作ってくれているので自炊はしないのだけど、なにかの事情がある場合なんかはイタリア仕込みヒップホップ育ちの腕を披露するというか包丁一本さらしに巻いて肴は炙った烏賊でいい具合に自炊する。メニューは炒飯のみ。おそらく世界中の男性を集めて炒飯を作らせたらすごい量になるほど右に出る者はいない。
レシピは門外不出一子相伝なので割愛するのだけど、炒まったら皿に移すのだけど、漢の炒飯の盛り付けってものは、木べらとかおたまとか使ってはならないという掟があるので、中華なべないしフライパンを傾けて揺すって炒飯を皿に盛ることになる。根底にはちょっとした手首の力自慢大会的な意味合いがあると踏んでいる。
『色男、金と力はなかりけり』と昔の人はよく言ったもので、超絶色男であるところの僕なので超絶貧乏で超絶貧弱であるからして、皿の上にどボトボトと炒飯を落としているうちにフライパンを持つ腕が辛くなってきて次第に傾き始める。皿の上の炒飯の嵩は上がりフライパンは下がるので加速度的に二人の仲は急接近してしまうわけでそのうち当たる。
さっきまで地獄の業火に焼き尽くされていたフライパンなので、ぼんやり皿の上で佇んでいた炒飯は側面に触れるや否や、まるで運命の糸に手繰り寄せられる二人のようにジュッと焦げ付いてしまうのだ。そこで慌ててフライパンを持ち上げたりすると最後のひとボトリが皿ではなくテーブルの上にボトリと落ちてしまうので更に始末が悪い。皿だけに。更に。ぶふー


斯様に炒飯の8割りがフライパンの横のところにくっついてしまうのを『Angels' share(天使の分け前)』と呼んでいるというか、なんとかして欲しい。でも、こそげて食べるとおいしいんだよ。